昇進試験で出題されるインバスケット問題に苦手意識を持っていませんか?
「どのように優先順位をつければいいのか」「模範的な回答の書き方がわからない」と悩んでいる方も多いでしょう。
インバスケット問題は、限られた時間内で複数の案件を処理し、適切な意思決定を行うスキルが求められる試験です。管理職候補としての判断力やマネジメント能力が試されるため、事前の対策が不可欠です。
この記事では、インバスケット問題の回答の流れや具体的な回答例を紹介し、試験で高得点を取るためのポイントを解説します。
また、実務にも役立つインバスケット思考の鍛え方や、無料で学べる学習リソースも紹介します。
インバスケット試験の攻略法を知り、スムーズに回答できるようになりましょう。
1. インバスケット問題とは?基本を理解しよう
インバスケット問題は、限られた時間の中で複数の業務課題に対処し、適切な意思決定を行う力を試す演習です。
特に昇格試験や管理職登用試験でよく用いられ、リーダーシップや問題解決能力を評価する指標となります。
実際の試験では、未処理の案件を渡され、限られた時間内に適切な対応策を決定するという設定が多く見られます。書類の内容を読み取り、対応の優先順位を決め、指示や改善策を考えながら回答を作成していくのが基本的な流れです。
インバスケット問題は、次のような場面で活用されます。
- 昇進試験(課長・部長などの管理職候補者向け)
- 研修・教育(意思決定のトレーニングやリーダーシップ育成)
- 選考試験(企業がマネジメント適性を測るための試験)
本記事では、インバスケット問題の回答の流れや回答例を詳しく解説し、実践的なスキルを身につけられるようにしていきます。
インバスケット問題の詳細は以下をご覧ください。

2. インバスケット問題の回答の流れ
問題の読み取り方とポイント
インバスケット問題では、状況を正確に把握することが最も重要です。
問題文の情報を整理し、以下のポイントを意識しましょう。
- 事実と意見を分ける
- 問題文には、客観的な事実と登場人物の主観的な意見が混在していることが多いです。事実のみを抽出し、対応策を考えます。
- 不足情報を確認する
- 判断に必要な情報がすべて揃っているとは限りません。不明点があれば、仮の前提を置いた上で判断するか、追加の情報収集を考慮しましょう。
- 登場人物の立場を理解する
- 指示を出す上司や対応を求める部下、それぞれの立場によって優先すべき事項が異なります。相手の立場に立って問題を整理することが重要です。
以下のステップを意識しながら、問題を読み進めるとスムーズに回答できます。
- 問題の全体像を把握する
- 緊急度と重要度を判断する
- 関係者の立場を考慮する
- 不足している情報を補う
- 優先順位をつけて意思決定を行う
優先順位のつけ方の基本
インバスケット問題では、多くの課題が同時に提示されます。
その中でどれから対応するかを決めるのが「優先順位付け」のプロセスです。
優先順位を決める際の基本的な基準は、以下の2軸で考えます。
| 緊急度(Urgency) | 重要度(Importance) |
|---|---|
| すぐに対応しないと大きな問題になるか? | 組織や業務全体にとって重要な案件か? |
この考え方を基に、以下の4つのカテゴリーに分類すると効果的です。
| 分類 | 対応の優先度 | 例 |
|---|---|---|
| 緊急かつ重要 | 最優先で対応 | クレーム対応、納期直前の案件 |
| 緊急だが重要でない | できるだけ早く処理 | 一時的な業務対応、軽微なミス |
| 重要だが緊急でない | 計画的に対応 | 部下の育成、業務改善 |
| 緊急でも重要でもない | 優先度低 | 不要な会議、雑務 |
このように、緊急度と重要度をマトリクスで整理すると、意思決定がスムーズになります。
緊急度と重要度をマトリクスの詳細は以下をご覧ください。

効果的な意思決定の方法
インバスケット問題では、短時間で適切な意思決定を下すことが求められます。そのために、次の手順を意識しましょう。
- 状況を整理する
- 問題文から得られる情報を整理し、「事実」「意見」「仮定」に分類する。
- 影響範囲を考慮し、どのステークホルダーに影響があるのかを確認する。
- 選択肢を洗い出す
- 可能な選択肢を複数挙げ、それぞれのメリット・デメリットを比較する。
- 代替案(Plan B)も検討しておく。
- リスクを考慮する
- 各選択肢のリスクを評価し、最も適切なリスクヘッジを考える。
- 「最悪の事態」を想定し、それが起こった場合の対応策を準備する。
- 意思決定を行い、行動計画を立てる
- 最適な選択肢を決定し、具体的な対応策を決める。
- いつまでに、誰が、どのように対応するのかを明確にする。
このように、状況整理から行動計画までを一貫して考えることで、合理的な判断ができるようになります。
短時間で回答するためのコツ
インバスケット問題は制限時間があるため、迅速に対応するスキルが求められます。短時間で回答するためのコツを紹介します。
- 問題文を一度にすべて読むのではなく、分類しながら進める
- 最初に問題をざっと確認し、「緊急度・重要度」を意識して振り分ける。
- すべての問題を細かく読み込む前に、大まかな優先順位を決める。
- テンプレート化された回答フレームを活用する
- 「現状 → 課題 → 解決策 → 実施手順」というフォーマットで考える。
- 例:「報告不足によるミスが発生(現状)。報告体制が整っていない(課題)。定期ミーティングを導入(解決策)。来週から試行(実施手順)。」
- 決断を迷わない
- インバスケット試験では「決断力」も評価されるため、悩みすぎずに割り切って進める。
- 「完璧な答え」を求めるのではなく、「実現可能な解決策」を提示することを意識する。
3. インバスケット問題の回答例【基本編】
インバスケット問題では、さまざまなケースが出題されます。
ここでは、実際によくある問題を具体的に取り上げ、それに対する回答例を紹介します。
緊急度と重要度の判断基準
インバスケット問題では、すべての案件に同じ優先度で対応するのではなく、優先順位を適切につけることが重要です。
以下の基準で判断すると、スムーズに対応が進められます。
| 優先度 | 判断基準 | 例 |
|---|---|---|
| 最優先(即対応) | 緊急かつ重要 | 顧客クレーム、期限当日の対応 |
| 優先(できるだけ早く対応) | 緊急だが重要度は低い | 軽微なトラブル対応、報告依頼 |
| 計画的に対応 | 重要だが緊急でない | 業務改善、部下の育成 |
| 後回し(低優先度) | 緊急でも重要でもない | 雑務、形式的な確認事項 |
この分類をもとに、具体的な問題を解決していきます。
よくあるインバスケット問題と回答例
問題例①:顧客からのクレーム対応
【問題文】
「取引先A社の担当者から、納品された製品に不備があるとのクレームが入った。A社はこの製品を本日中に使用する予定であり、早急な対応を求めている。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急かつ重要」な問題として最優先で対応
②対応策の決定
- まず、クレームの詳細をA社に確認(どのような不備があるのか)。
- 在庫がある場合は代替品を即日発送する。
- 在庫がない場合は修正対応を提案し、納期の調整を行う。
- 今後のクレームを防ぐため、品質管理部門と情報共有を行う。
③回答文(メール・報告用)
A社の担当者様へ
この度は弊社の製品に不備があり、ご迷惑をおかけしました。
現在、社内で原因を調査中ですが、取り急ぎ代替品の手配を進めております。
本日中に発送手続きを完了し、明日の午前中にはお手元に届くよう手配いたします。
詳細な原因と再発防止策については、追ってご報告いたします。
【ポイント】
- 最優先で対応することを明確にする
- 顧客の不安を軽減するため、即対応策を提示する
- 社内の品質管理部門とも情報共有し、再発防止を図る
問題例②:上司や部下との調整が求められるケース
【問題文】
「部下のBさんが、来週の重要なプロジェクト会議を欠席したいと申し出ている。しかし、Bさんはこのプロジェクトの主要メンバーであり、欠席すると進行に影響が出る可能性がある。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急ではないが重要」な問題として優先的に対応
②対応策の決定
- Bさんに欠席の理由を確認する。
- どうしても出席できない場合は、代替案(別メンバーによる引き継ぎ)を検討する。
- 上司やプロジェクトチームに状況を報告し、調整を行う。
③回答文(Bさんへのメール)
Bさんへ
来週のプロジェクト会議についてですが、Bさんは主要メンバーであり、ご欠席されると進行に影響が出る可能性があります。
まず、欠席の理由を確認したいと思います。
やむを得ない事情がある場合は、事前に資料をまとめ、他のメンバーと共有する方法を検討しましょう。
【ポイント】
- 部下の事情を考慮しつつ、業務の影響を最小限にする
- 代替案を提示し、プロジェクト進行に支障が出ないよう調整する
問題例③:予算管理や経費関連の問題への対応例
【問題文】
「現在の予算が逼迫しており、予定していた新規プロジェクトの実施が難しい状況。どのコストを削減すべきか検討し、提案する必要がある。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、計画的に対応
②対応策の決定
- 現在のコスト内訳を分析し、削減可能な項目を特定する。
- 不要な経費(広告費・研修費など)を削減する案を検討。
- 影響の少ない範囲でプロジェクトのスケジュールを見直す。
③回答文(社内報告書の例)
現状の予算分析を行った結果、以下の対応策を提案します。
①広告費の一部削減(年間予算の20%カット)
②研修費用の一時凍結(次年度以降に再検討)
③新規プロジェクトのスケジュール調整(半年後に延期)
【ポイント】
- コスト削減の具体策を提示する
- 業務への影響が最小限になるよう調整する
問題例④:期限が迫っている案件の適切な対処法
【問題文】
「現在進行中のプロジェクトの納期が3日後に迫っている。しかし、チームメンバーの1人が体調不良で欠勤しており、予定していた作業の一部が完了していない状況。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急かつ重要」な問題として最優先で対応
②対応策の決定
- 未完了の作業をリスト化し、影響範囲を把握する。
- 他のチームメンバーに作業を割り振り、分担して進める。
- クライアントや上司に状況を報告し、必要であれば納期の延長を打診する。
③回答文(社内チームへの指示)
現在、〇〇プロジェクトの納期が3日後に迫っていますが、Aさんの欠勤により、一部作業が遅れています。
本日中に作業分担を再調整し、効率的に進めるようにしましょう。
また、クライアントには、進捗を報告しつつ、納期の調整が可能か確認します。
【ポイント】
- 納期遅れを防ぐため、すぐに対応策を考える。
- 社内調整とクライアント報告を並行して進める。
問題例⑤:会議の進行や議事録対応の問題とその解決策
【問題文】
「上司から『明日の部門会議の進行を担当してほしい』と急な依頼を受けた。しかし、準備する時間が限られており、どのように進めればよいか迷っている。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急ではないが重要」な問題として優先的に対応
②対応策の決定
- 過去の会議資料を確認し、議題の流れを把握する。
- 議事録担当者を決め、発言内容を記録する体制を整える。
- 会議で必ず決定すべき事項を整理し、進行のシナリオを作成する。
③回答文(会議進行の準備メモ)
〇〇部門会議の進行担当として、以下の流れで進めます。
1. 開会の挨拶(目的とゴールの明確化)
2. 各部署からの報告(5分以内で簡潔に)
3. 主要議題(議論すべきポイントを整理)
4. 結論の確認と次回までのアクションプラン決定
【ポイント】
- 短時間で準備できるよう、過去の資料を活用する。
- 発言の記録を議事録担当に任せることで、自分は進行に集中する。
問題例⑥:報告・連絡・相談が求められる場面での適切な対応
【問題文】
「部下のCさんが独断で取引先との交渉を進めており、事後報告で上司から注意を受けた。Cさんにはどのように指導すればよいか?」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、計画的に対応
②対応策の決定
- Cさんにヒアリングを行い、独断で進めた理由を確認する。
- 「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」の重要性を伝える。
- 今後は事前に上司へ確認するルールを決める。
③回答文(Cさんへのフィードバック)
Cさん、今回の取引先との交渉について、先に相談があった方がより適切な判断ができたかもしれません。
次回からは、重要な決定をする前に、上司やチームに報告・相談をするようにしてください。
【ポイント】
- 頭ごなしに叱らず、指導として伝える。
- 「報告しやすい環境」を作ることもリーダーの役割とする。
問題例⑦:情報共有の遅れによるリスク管理とその対策
【問題文】
「社内の別部署でトラブルが発生していたが、自部署には情報が共有されておらず、対応が遅れた。今後のリスク管理をどう改善すべきか?」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、中長期的な対応が必要
②対応策の決定
- 部門間の情報共有ルールを見直し、週次報告を義務化する。
- オンラインツール(チャット・共有フォルダ)を活用し、リアルタイムでの情報共有を強化する。
- 「影響のある部署には必ず報告する」という社内ルールを再確認する。
③回答文(改善提案のメール)
今回の情報共有不足により対応が遅れました。今後は以下の対策を実施します。
1.各部門のリーダーが週次で進捗を共有する会議を設定
2.緊急のトラブルが発生した際は、即時報告ルールを設定
3.情報共有のための社内チャットツールを活用し、可視化を図る
【ポイント】
- 個人の問題ではなく、組織的な仕組みで解決を図る。
- 情報共有ルールを明文化し、誰でも実践できる形にする。
問題例⑧:部下のモチベーション管理に関する課題と対応策
【問題文】
「最近、部下のDさんの業務に対するモチベーションが低下しており、成果も下がってきている。Dさんはリーダー候補として期待されているが、現状では主体的に行動できていない。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、中長期的な対応が必要
②対応策の決定
- Dさんとの個別面談を実施し、モチベーション低下の原因を探る。
- 短期的な目標を設定し、小さな成功体験を積ませる。
- Dさんに裁量を与え、責任を持たせる業務を増やす。
③回答文(Dさんとの面談時のポイント)
最近、業務に対するモチベーションが下がっているように見えますが、何か悩みや課題はありますか?
もし、業務の方向性やキャリアに不安があるなら、一緒に目標を設定しながら進めていきましょう。
【ポイント】
- 原因を特定し、本人の意向を尊重する。
- 短期的な目標を作り、成功体験を積ませる。
問題例⑨:業務負担が集中している部下への適切な対応
【問題文】
「Eさんが現在、複数のプロジェクトを担当しており、業務負担が大きくなっている。残業も増えており、体調に影響が出始めている。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急かつ重要」な問題として早急に対応
②対応策の決定
- Eさんの業務負担を洗い出し、優先度を整理する。
- チームメンバーと調整し、一部業務を分担する。
- 長期的には、業務フローを見直し、負担を分散させる仕組みを作る。
③回答文(Eさんとのヒアリング)
現在の業務量が多く、負担がかかっているように感じます。どの業務が特に負担になっているか、一度整理し、チームで分担できるように調整しましょう。
【ポイント】
- 短期的な対応(業務分担)と長期的な対応(業務フロー改善)の両面を考える。
- 部下の体調を最優先にし、適切なサポートを行う。
問題例⑩:社内の小さなトラブルを早期解決する判断力
【問題文】
「社内の備品が不足しているという報告が複数の部署から上がっている。しかし、明確な管理体制がなく、発注漏れが発生している。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急ではないが重要」な問題として計画的に対応
②対応策の決定
- 発注担当者を決め、定期的に備品状況を確認する仕組みを作る。
- 在庫管理システムを活用し、発注漏れを防ぐ。
- 社内ルールを明確化し、責任の所在を明確にする。
③回答文(社内改善提案)
備品の管理体制が不明確なため、発注漏れが発生しています。今後、発注担当者を明確にし、備品リストを作成・管理することで、トラブルを防ぎましょう。
【ポイント】
- 小さな問題でも放置せず、早めに仕組みを作ることが大切。
- 誰が管理するのか明確にし、責任の所在をはっきりさせる。
- 優先順位を適切に判断し、的確な意思決定を行う。
- 部下のマネジメントでは、個々の状況に応じた対応を意識する。
- 社内トラブルや業務改善は、仕組み化して防ぐ視点を持つ。
4. インバスケット問題の回答例【応用編】
基本編では、一般的なインバスケット問題の対応を解説しました。
応用編では、より高度な判断が求められるケースや、マネジメントスキルが必要な問題への対応例を紹介します。
問題例①:クレーム対応のケースと適切な判断例
【問題文】
「取引先B社から『納品された商品が発注内容と異なっている』とのクレームが入った。B社は『至急対応しないと取引を見直す可能性がある』と強く訴えている。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急かつ重要」な問題として最優先で対応
②対応策の決定
- まず、発注内容と納品された商品を確認し、事実関係を把握する。
- 社内の担当者と連携し、誤納品の原因を特定する。
- B社に謝罪し、迅速な対応策(再納品・代替品の提供)を提示する。
③回答文(B社への返信メール)
B社 ご担当者様
このたびは納品に関する不備が発生し、ご迷惑をおかけし申し訳ございません。
現在、社内で詳細を確認しておりますが、取り急ぎ正しい商品を本日中に発送いたします。
今後、このような事態が発生しないよう、チェック体制を強化いたします。
【ポイント】
- 事実確認を行い、クレームの原因を明確にする。
- 顧客の不安を取り除くため、迅速な対応を示す。
問題例②:業務改善を求められるケースの対応例
【問題文】
「上司から『現在の業務フローにムダが多いので、改善案を考えてほしい』と依頼を受けた。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、計画的に対応
②対応策の決定
- 業務の流れを分析し、非効率なポイントを特定する。
- 自動化・システム導入などの効率化策を検討する。
- 改善案を資料にまとめ、上司に提案する。
③回答文(上司への提案書抜粋)
現在の業務フローにおいて、以下の点が非効率であると考えます。
・書類の手作業処理が多く、時間がかかっている。
・承認プロセスが複雑で、意思決定が遅れている。改善策として、電子決裁システムの導入を提案いたします。これにより、業務時間の削減が期待できます。
【ポイント】
- 具体的な問題点を示し、説得力のある改善策を提案する。
- すぐに実行可能な施策を考え、現実的な解決策を提示する。
問題例③:人事関連のインバスケット問題の回答例
【問題文】
「部下のFさんから『給与が同僚より低いのではないか』と相談を受けた。Fさんはチームに貢献しており、モチベーション低下が懸念される。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、慎重に対応
②対応策の決定
- 給与の評価基準を確認し、事実関係を整理する。
- 上司や人事部と相談し、適切な対応を検討する。
- Fさんに現状を説明し、キャリアアップの道筋を示す。
③回答文(Fさんへのフィードバック)
Fさん、給与についてのご相談ありがとうございます。
会社では給与を評価基準に基づいて決定していますが、今後の昇給の可能性について、一度人事部と相談してみます。
また、さらなるスキルアップや昇進のチャンスについても一緒に考えていきましょう。
【ポイント】
- 感情的な対応を避け、事実に基づいた説明をする。
- 将来的なキャリアの視点を示し、モチベーションを維持する。
問題例④:会社の方針と相反する案件の対応方法
【問題文】
「取引先G社から、新規の契約を提案された。しかし、この契約内容は会社の方針と一部相反している。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、慎重に対応
②対応策の決定
- 会社の方針を確認し、問題点を明確化する。
- G社に、契約内容の調整が可能か交渉する。
- 最終的な判断を上司や経営陣に委ねる。
③回答文(上司への報告)
G社からの新規契約提案ですが、会社の方針と一部相反する内容が含まれています。
具体的には、〇〇の条件が当社のガイドラインと異なります。
対応策として、契約内容の一部修正をG社に提案することを考えていますが、ご意見をいただけますでしょうか。
【ポイント】
- 独断で決めず、会社の方針に沿った判断を行う。
- 取引先との関係を維持しつつ、適切な交渉を試みる。
問題例⑤:想定外のトラブル発生時の考え方と解決策
【問題文】
「社内のシステムトラブルが発生し、業務がストップしている。早急に復旧する必要がある。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急かつ重要」な問題として最優先で対応
②対応策の決定
- IT部門と連携し、トラブルの原因を特定する。
- 復旧までの代替手段(手作業・バックアップ運用)を検討する。
- 社内へ適宜進捗を報告し、混乱を防ぐ。
③回答文(社内向け通知)
現在、社内システムに障害が発生し、業務に影響が出ています。
IT部門が復旧作業を進めていますが、復旧までの間、手作業での対応をお願いいたします。
【ポイント】
- 冷静に状況を整理し、迅速に対応策を打ち出す。
- 社内に情報を共有し、混乱を最小限に抑える。
問題例⑥:リーダーシップが問われる状況での対応例
【問題文】
「プロジェクトの進捗が大幅に遅れており、チームの士気も低下している。リーダーとして、どのように立て直すべきか?」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急かつ重要」な問題として優先的に対応
②対応策の決定
- プロジェクトの遅れの原因を分析し、ボトルネックを特定する。
- チームメンバーと個別に面談し、課題や不安をヒアリングする。
- 短期目標を設定し、進捗管理を強化する。
③回答文(チームミーティング時のスピーチ)
現在、プロジェクトの進捗が遅れている状況ですが、まずは原因を明確にし、チーム全員で解決策を考えていきましょう。
一人で抱え込まず、互いに協力しながら、目標達成を目指しましょう。
【ポイント】
- チームの状況を把握し、適切な指導とサポートを行う。
- 短期的な目標を示し、チームの士気を回復させる。
問題例⑦:社内外の利害関係者との調整が必要な場合の対応
【問題文】
「新規事業の立ち上げにあたり、他部署や外部パートナーとの調整が必要だが、意見が対立しており進展がない。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、計画的に対応
②対応策の決定
- 各関係者の立場を整理し、対立の原因を特定する。
- 共通のゴールを設定し、双方が納得できる妥協点を探る。
- 定期的なミーティングを設定し、情報共有を密にする。
③回答文(関係者への提案)
新規事業の進行にあたり、各部署の意見が分かれているため、一度合同ミーティングを開催し、方向性を明確にしたいと考えています。
共通の目標を設定し、円滑に進めるための方法を議論しましょう。
【ポイント】
- 対立の原因を整理し、冷静に対応する。
- 共通の目標を設定し、全員が納得できる方向性を探る。
問題例⑧:売上や業績に影響を与える問題の意思決定方法
【問題文】
「今月の売上が目標に達しておらず、緊急の施策を打つ必要がある。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急かつ重要」な問題として即時対応
②対応策の決定
- 売上が伸び悩んでいる原因を特定し、改善策を検討する。
- 短期間で成果が期待できる施策(キャンペーン、特別割引など)を実施する。
- 営業チームと連携し、重点顧客へのアプローチを強化する。
③回答文(営業チームへの指示)
今月の売上が目標に届いていないため、重点顧客へのアプローチを強化してください。
また、短期的なキャンペーンを企画し、売上向上に向けた施策を実施します。
【ポイント】
- 売上の問題は迅速に対応し、短期・長期の施策を考える。
- チームと協力し、即効性のある施策を実施する。
問題例⑨:法律やコンプライアンスに関わるインバスケット問題の対処法
【問題文】
「新しい業務フローを導入しようとしているが、法務部から『コンプライアンス上の問題がある』と指摘された。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、慎重に対応
②対応策の決定
- 法務部と連携し、問題点を明確にする。
- リスクを最小限に抑えた代替案を検討する。
- 必要であれば、専門家の意見を仰ぎながら進める。
③回答文(法務部との協議メモ)
現在の業務フローに関し、コンプライアンスの懸念があるとのご指摘を受けました。
問題点を整理し、リスク回避のための修正案を検討したいと思います。
【ポイント】
- 法律問題は慎重に対応し、専門家の意見を取り入れる。
- 代替案を検討し、リスクを最小限に抑える。
問題例⑩:外部からの急な依頼や想定外の業務対応の判断基準
【問題文】
「急遽、外部の取引先から『今週中に追加の対応をしてほしい』という依頼があった。しかし、現在の業務量では対応が難しい状況。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急だが重要度は低い」ため、調整が必要
②対応策の決定
- 現在の業務状況を整理し、対応可能な範囲を明確にする。
- 取引先に納期の調整を依頼し、無理のないスケジュールを組む。
- チームと協議し、一部業務の優先順位を変更する。
③回答文(取引先への回答)
追加対応のご依頼について、現在の業務状況を考慮し、納期の調整をお願いできればと存じます。
できる限り迅速に対応いたしますので、詳細についてご相談させてください。
【ポイント】
- 外部からの要望には、無理のない範囲で調整する。
- 納期調整を提案し、現実的な解決策を探る。
問題例⑪:部下の評価や昇進に関する適切な判断と対応
【問題文】
「現在、部下のGさんが昇進候補に挙がっているが、一部の同僚から『まだ昇進には早いのではないか』という意見が出ている。Gさんの昇進をどう判断すべきか?」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要だが緊急ではない」ため、慎重に対応
②対応策の決定
- Gさんの過去の実績・スキルを客観的に評価する。
- 上司や他の同僚の意見を聞き、公平な判断をする。
- Gさんのキャリアプランを確認し、本人の意向も考慮する。
③回答文(上司への報告メモ)
Gさんの昇進について、以下の点を考慮しました。
・実績:〇〇プロジェクトを成功させ、チームへの貢献度が高い。
・スキル:リーダーシップに優れているが、課題管理に改善の余地あり。
・同僚の意見:一部から懸念があるものの、全体としては前向きな評価。
以上を踏まえ、昇進に向けた育成プランを検討するのが望ましいと考えます。
【ポイント】
- 感情的な判断を避け、客観的な評価基準をもとに決定する。
- 本人の成長機会を考慮し、育成プランを組むのも選択肢の一つ。
問題例⑫:チーム内の対立やコミュニケーション不全の解決策
【問題文】
「チーム内で対立が発生し、メンバー間のコミュニケーションが悪化している。このままでは業務に影響が出る可能性がある。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「重要かつ緊急」な問題として、早期に対応
②対応策の決定
- 対立の原因を特定し、それぞれの立場を理解する。
- チームミーティングを実施し、意見交換の場を設ける。
- 共通の目標を設定し、チーム全体の方向性を統一する。
③回答文(チームミーティングのアジェンダ)
チーム内で意見の食い違いがあるため、以下の内容でミーティングを実施します。
1. 現状の課題整理(対立の要因を明確化)
2. 各メンバーの意見共有(対話の場を設ける)
3. 解決策の検討(建設的な意見を交わし、共通認識を持つ)
【ポイント】
- 感情的な対立を避け、冷静に話し合う場を設ける。
- チームの共通目標を再確認し、協力体制を築く。
問題例⑬:外部からの急な依頼や想定外の業務対応の判断基準
【問題文】
「取引先H社から『急ぎで対応してほしい案件がある』と依頼があったが、現在のリソースでは対応が難しい状況。」
【回答例】
①緊急度・重要度の判断
→ 「緊急だが重要度は低い」ため、調整が必要
②対応策の決定
- 現在の業務負荷を確認し、対応の可否を判断する。
- 取引先に納期の調整を依頼し、スケジュールを再調整する。
- チームメンバーと相談し、一部業務の優先順位を変更する。
③回答文(取引先への返信)
H社 ご担当者様
急ぎの案件についてご連絡ありがとうございます。
現在の業務状況を考慮し、対応が可能な範囲について調整中です。
具体的なスケジュールをご相談できればと思いますので、一度お打ち合わせの機会をいただけますでしょうか。
【ポイント】
- 無理に受けるのではなく、現実的な対応策を提案する。
- 取引先と納期調整を行い、無理のない範囲で対応する。
- チームマネジメントでは、リーダーシップを発揮し、メンバーの状況を把握する。
- 社内外の利害関係者との調整では、共通のゴールを設定し、対立を解消する。
- 売上や業績への影響がある問題には、迅速かつ効果的な対応策を打つ。
- コンプライアンスや法律関連の問題には、慎重な対応と専門家の意見を活用する。
- 想定外の依頼には、リソースを考慮し、無理のない範囲で調整する。
5. インバスケット問題の回答力を向上させる方法
インバスケット問題を解く力を高めるには、過去の問題を分析し、思考力を鍛えることが重要です。
ここでは、実践的なトレーニング方法や、日常業務で活かせる考え方を紹介します。
過去の問題を分析してパターンを学ぶ
インバスケット問題には、よく出題されるパターンがあります。
過去の問題を分析することで、回答のコツをつかみやすくなります。
代表的な問題パターン:
- 優先順位付け … 緊急度と重要度を見極める問題
- チームマネジメント … 部下の指導やモチベーション管理
- 顧客対応 … クレーム処理や取引先との交渉
- コスト管理 … 予算調整や経費削減の意思決定
- リスク管理 … 想定外のトラブル発生時の対応
対策方法:
- 過去問を解き、回答プロセスを記録する
- 同じパターンの問題が出たときに、どう対応すべきか整理する
- 間違えたポイントを分析し、改善策を考える
※過去問に挑戦してみたい方は、以下の記事をご覧ください。


判断力を鍛えるトレーニング方法
インバスケット問題は、素早く的確な判断を下す力が求められます。
日常業務の中で判断力を鍛える方法を紹介します。
1. 1分で意思決定を行う練習
- 1つの課題に対して、1分以内に「最善の判断」を下すトレーニングを行う。
- 直感で判断するのではなく、優先順位や影響範囲を考慮して決定する習慣をつける。
2. 事例ベースでロールプレイングを行う
- 過去のインバスケット問題を使い、実際に意思決定を行うシミュレーションを行う。
- 上司や同僚と議論しながら、「どの選択肢が最も適切か」を考える。
3. 「もし〇〇なら?」を常に考えるクセをつける
- 日常の業務でも、「もし急なトラブルが発生したら?」「このプロジェクトが失敗したら?」とリスクシナリオを考える習慣を持つ。
- 事前にシミュレーションをしておくことで、実際のトラブル発生時にも冷静に対応できる。
仕事で実践できるインバスケット思考の鍛え方
インバスケット問題のスキルは、日常の業務にも応用できるものです。
業務の中で「インバスケット思考」を意識することで、自然と問題解決力が向上します。
- メールの対応を「緊急度×重要度」で分類する
→ すぐ対応すべきか、後回しでよいかを瞬時に判断するトレーニングになる - 会議で「最優先課題」を決めて発言する
→ 限られた時間で、最も重要な課題にフォーカスする力を鍛える - 部下や同僚の相談に「解決策ベース」で返答する
→ 「問題→解決策→実行プラン」というフレームワークで考えるクセをつける
- 過去の問題を分析し、よく出るパターンを押さえる
- 意思決定力を鍛えるトレーニングを日常的に行う
- 仕事の中で「インバスケット思考」を実践し、スキルを磨く
まとめ|インバスケット問題の回答力を高めるポイント
これまでの内容を踏まえ、インバスケット問題を効果的に解くためのポイントを整理します。
- インバスケット問題の基本を理解する
- 限られた時間内で優先順位をつけ、適切な意思決定を行う能力が求められる
- 昇進試験や管理職研修でよく用いられる
- 回答の流れを押さえる
- 問題を整理し、緊急度と重要度を基準に優先順位を決める
- 選択肢を洗い出し、リスクを考慮した上で最適な判断を行う
- 具体的な行動計画を立て、明確な指示を出す
- インバスケット問題の回答例を学ぶ
- 顧客クレーム、予算管理、人事評価、チームマネジメントなど、多様なケースに対応できるようにする
- 応用編では、利害関係者との調整やコンプライアンス問題への対応力も必要
- 回答力を向上させるためのトレーニング
- 過去問を分析し、出題パターンを把握する
- 1分以内で意思決定する練習や、ロールプレイングを取り入れる
- 日常業務の中で「インバスケット思考」を実践し、判断力を磨く
- おすすめの学習リソースを活用する
- インバスケット問題対策の書籍や演習問題を活用し、定期的に練習する
インバスケット問題は、単なる試験対策ではなく、実際のビジネスシーンで役立つスキルです。
日々の業務の中で訓練を積み、スムーズな意思決定ができるように準備しておきましょう。
※過去問に挑戦してみたい方は、以下の記事をご覧ください。


